『風の谷のナウシカ』(全7巻)
宮崎 駿著/徳間書店刊/1〜4巻340円/5巻350円/6巻380円/7巻490円

 著者が13年にわたって雑誌に連載し続け、完結したSFマンガである。マンガといってあなどるなかれ。これは1つの宗教書ともいえる。

 大規模な世界戦争によって絶頂期の都市文明は壊滅状態に陥る。不毛の地の中で生き残った人々は、変形・巨大化した虫の群や毒の胞子を放つ植物の恐怖に怯えながら暮らす。やがて再び愚かな戦争が繰り返される。

 単なる反戦あるいは環境問題の告発にとどまらず、特に後半は、人間の本性といのちの尊厳を鋭く問うていく。その点で、本書完結の数年前に著者の手になった同名のアニメ映画とは、方向性が明らかに異なっている。湾岸戦争を始め、激動の世界情勢の中で揺れ動いた著者の心情をそのまま映し出している。いかに愚かな行為を重ねようと、どのような環境であろうとも、人間は懸命に生きていこうとする。いのちの前には善も悪もないのである。

 「いのちは闇の中にまたたく光だ。」主人公ナウシカが最後の方で語る言葉が心を揺さぶる。