『蓮如物語』
五木寛之著/角川書店刊/定価1,000円

 「親鸞さまについておゆき。そして、一生かけてお念仏を世間に広めるのですよ。」

 蓮如上人が六歳の時に別れた生母のこの言葉が、85年の生涯を生きる原点になった。著者・五木寛之氏は布袋丸(上人の幼名)に対する母親としての深い愛情と、母を慕う切ない子供ごころを物語の基底にしながら、人間を愛する優しさと、念仏に生きる情熱をもって生きられた上人の生涯を、深い思いをもって描いている。上人が生きた500年前の日本は、天災と飢饉、あいつぐ戦乱で、多くの民衆はその日その日をあえぎながら生きていた。その民衆に爆発的に受け入れられ、本願寺を再興された上人の人間像が、親しみの中に受け止められる。

 ベストセラーになった著者の戯曲『蓮如』が、今、前進座によって全国巡演されているが、この『蓮如物語』について、著者自身が次のように述べている。「蓮如上人という、若い世代にはあまりなじみのない人物に、子供たちが人間的な親しみと興味を糸口にでもなれば、というのが作者の願いでした。(中略)子供たちだけでなく、その父母のかたがたにも気軽に手にとって頂ければ幸いです」と。この本を読んで、私もそのように願っている。