舎利弗(しゃりほつ)

 『阿弥陀経』で釈尊の説法の対象となる長老舎利弗は、梵語でシャーリプトラあるいはシャーラドヴァティプトラといい、舎利子・秋露子などとも記されます。釈尊の十大弟子の1人に数えられ、智慧第一と讃えられます。

 舎利弗は、もとサンジャヤという異教徒の一番弟子でしたが、その教えに満足できずにいたとき、釈尊最初の弟子であったアシュヴァジット(馬勝、アッサジ)に出会い、短い縁起の偈文を聞いて即座に仏教の奥義を悟り、親友の目連(マウドガリヤーヤナ)とともに釈尊に帰依しました。彼らの兄弟弟子たち250人も、2人に連れ立って仏教に改宗したため、師のサンジャヤは、弟子をすべて失い、口から火を噴いて死んだといわれます。

 仏教入門後の舎利弗は、釈尊の代りに説法できるほど信任厚く、教団を引っ張る中心的指導者として活躍しました。目連とは幼い頃から常に行動をともにするほど大の親友でしたが、目連が過激な異教徒に急襲されて殺されると、舎利弗も一緒に入滅したといわれます。

 釈尊に「自分の後継者は舎利弗」と言わしめるほどの高弟でしたが、釈尊よりも先に亡くなったのです。

 そのことを思うと、あの短い『阿弥陀経』の中に38回にもわたって繰り返し「舎利弗よ」と語りかけられる釈尊の言葉が、実に切なく響きます。死にゆく舎利弗に浄土を説き示し、先に浄土で待っててくれよと、やさしく語りかけられているようです。